水文の台湾
2025 / 6月
四方を海に囲まれ、河川が密集した台湾では水は自然資源であるだけでなく、文化的記憶の媒介でもある。北から南まで水と関わる数々の空間は景観を成すとともに、大地に対する人々の深い思いや信仰、民俗文化とつながっている。河川や溜め池を訪れると、これらの「水辺」で生まれた信仰や生活の記憶が、現代の都市と静かに交わり、台湾独特の文化的景観を生み出していることに気付かされる。
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カバーストーリー
台湾の信仰と民俗文化における「水」
漢民族は、もともと陸地での思考をメインとする農耕民族だが、そうした先人たちが数百年前に台湾海峡を渡ってきた。彼らが暮らし始めた台湾は四方を海に囲まれ、険しい山が多く、河川の流れが速いため、......
台北市内で水に親しむ
作家の舒国治は『水域台北』に、1970年代の台北では到るところに用水路や水田があったと書いている。「女性たちは、そこここにある小川の岸で洗濯をしていた。人々が歩く道の横には川や溝が流れ、少......
南方の母なる川――高屏渓
地図を開くと、高屏渓は台湾南部に青く美しい葉脈のように広がっている。 玉山に源を発し、23の郷鎮(町村)を流れ、台湾海峡に注ぐ。荖濃渓、旗山渓(旧名は楠梓仙渓)、濁口渓、隘寮渓、美濃渓とい......
桃園台地に散りばめられた水晶――溜め池
桃園国際空港を離着陸する際、飛行機の窓から下を見ると、緑の中にたくさんの池が見える。夕焼けの時分ならオレンジ色の光の中、水面がキラキラと光っている。これが桃園台地の溜め池の風景であり、桃園......
水とともに生きる
知恵とレジリエンス
四方を海に囲まれ、河川が密集した台湾では水は自然資源であるだけでなく、文化的記憶の媒介でもある。北から南まで水と関わる数々の空間は景観を成すとともに、大地に対する人々の深い思いや信仰、民俗......