現地化する信仰
台湾で初めて一般の参拝に開放されたブラフマー祠が長春路に建てられてから30年になる。ブラフマー神は今では全台湾に100座近く祀られていると見られ、この間、参拝や祭祀の方法もしだいに現地化してきた。例えば、台湾では重要な伝統の祭祀はすべて旧暦で行われるが、長春路のブラフマー神の降誕祭も旧暦の11月9日に行われる。祭祀の儀式などにも台湾の信仰の特色が見られるようになった。タイの伝統儀式は比較的シンプルで、花を捧げ、線香をあげて祈願する。タイ舞踊の華人ダンサーである許美齢によると、タイでブラフマー神を参拝する時は、まず12本の線香に火をつけて捧げ持ち、四面神の正面から時計回りに3本ずつ線香を捧げていくという。だが、見たところ台湾では多くの場合、4本の線香で参拝しているようである。
この他に、地元の伝統的民間信仰の影響を受け、台湾のブラフマー神の祠でも、擲筊(三日月形の木片を二つ投げて、神の教えを請う占い)や、おみくじ、過炉(お守りなどを香炉にかざして清めること)、お供えなどの風習が取り入れられている。また、台湾では神明への感謝を表す奉納の舞などが非常ににぎやかに行われ、タイ舞踊からポップダンスやサンバまでさまざまな舞が奉納されるが、許美齢によると、タイのブラフマー神への奉納の舞は非常に厳かな儀式で、少しも気を抜くことはできないという。
ブラフマー神を祭る本来の儀式を理解することは、その文化を尊重することでもあるが、文化のグローバル化が進む中ではローカル化も避けられない趨勢と言える。心が誠なら通じるものである。神明と通じるには「敬」の念が最も大切なのではないだろうか。
南僑グループのブラフマー祠は、遠くタイから働きに来ている従業員に心の拠り所を持ってもらおうと建てられた。写真は2013年、タイから祭司を招いて行われた開光儀式。(南僑観光工場提供)
タイ舞踊の華人ダンサー許美齢は、伝統衣装と金の冠を身につけてブラフマー神のために敬虔に舞を捧げる。