厳密な縮尺計算
「梅花鹿」にはもう一つ驚かされる点がある。厳密な比重の計算と、モジュール化した設計である。この作品は、ほぼ1:1の実物大で、鹿の細長い足で大きな胴を支えなければならず、しかも鹿は横を向いて立っているため、いかに安定させるかが最大の課題となった。身体の各部位の比重を厳密に計算し、まず支えを作って臀部は芯までブロックを詰めて重心を後ろに置いた。さらに、モジュール化の手法を使って身体をいくつかのブロックに分け、展覧会出品などのために運びやすいよう、分解できるようにした。
2014年、「『レゴブロック』で作った世界遺産展」に参加するため、大白黒は台北万華の「龍山寺」を制作した。龍山寺を実際に訪れて100枚以上の写真を撮り、文献や平面図、施工図などのほか、Googleマップの航空写真や衛星画像なども参考にした。建築物全体の柱の数や縮尺を確認するためである。
製作は次のような工程で進められた。まず土台にブロックで龍山寺の輪郭を描いていき、各建物の大小の比率を確認する。高さはレゴ人形の背丈から設定した。
龍山寺の建築物は、牌楼、前殿、本殿、後殿に分けられる。その各所に装飾が施された複雑な建造物を再現するに当り、最も難しかったのはどこかと問うと、大白黒は「実はパーツ探しが一番の難関でした」と言って笑う。
龍山寺の細部を再現するために、彼が最も苦労したのは西洋建築のパーツを、どのように東洋建築に応用するか、そしてパーツの新用途を開発しなければならない点だった。東洋建築の屋根瓦は円柱の部品を組み立てて作り、反り返った屋根の先端にある龍の装飾は、蛇で代用した。門神はモザイクで表現し、龍柱には関節パーツを用いて龍の頭を抽象的に再現している。
内装も手を抜いていない。仏像にはレゴ人形のオスカー像を用い、お供えのミカンや蝋燭、祈願のための光明灯、それに壁面の彫刻や装飾などはさまざまなレゴパーツを用いてモザイク化して表現した。その煌びやかな美しさは本物の龍山寺に引けを取らない。
外観だけでなく、内部まで丁寧に作り上げる。「派出所」の2階の取調室では入れ墨をした人が手錠をかけられて壁のパイプにつながれている。