葉曄の葉書
鼠団のメンバーには、有名なペン習字家も少なくなく、葉曄もその一人である。
葉曄は30歳になったばかり、美しいペン文字を書く中学の美術教師である。国立台北教育大学書画図書部が実施する全国ペン習字コンクールの行書部門で連続5回優勝、楷書部門で1回優勝の成績を収めている。
旅鼠団員としてすでに教師レベルの葉曄は、しばしば地域のクラブなどの講師に招かれるし、また葉曄ともう一人の楊耕は、鼠団を通じて三采出版社から最初の手書き文字練習帖の『美字練習日:静心写好字(心静かに字を書く)』を出版することになった。この習字帖は予約購入段階で再版が決まり、4月現在で6万部を販売した。「人気のないペン文字がブームになるとは思いませんでした」と葉曄は言う。
葉曄がペン習字に熟達したのは、意外なことなに同級生から下手な字をからかわれたからだと言う。中三の時にボードに書いた字が同級生に笑われ、その雪辱にと懸命に練習したし、またペン習字名人との出会いもあって、次第にペン習字のコツをつかんでいった。
葉曄は名刺に「夜夜写字」と書いてるが、確かに毎晩1時間ほど机に向かい、静かに字を書いている。字を書くことは座禅と似ていて、悟りを開く感覚があるという。
一人楽しむだけでなく、教えることも好きである。書いた文字が感動を呼ぶと知ると、字を書くことは自分だけのことではないと感じる。
自分の字を鼠団にアップするだけではなく、ブログも開設していて、1カ月余りで8000人のアクセスがあった。アクセスするのは25~34歳の女性が多いという。
中学教師でもある彼は、生徒にも習字を勧めている。「生徒は連絡帳の私の字を見て、字の書き方を聞きに来るのです」と葉曄は楽しげである。字を書くことは人生への向き合い方を指し示すもので、字の下手な生徒も美しい字に興味を持ち、自分もと思うようになる。
人の書いた字を模倣するだけでは、独創性を失うという人もいるが、模倣は過程に過ぎないと葉曄は言う。同じ手本で書いても、一人一人書いた結果は異なってくる。
いやしを求めて文字を書く人が増え、関連する出版物やペン、インクなども売れるようになった。