三世代で守る店
郭国格は帰省して家の仕事を手伝おうと思ったのだが、かえって母親に支えてもらうことになったと言う。母親が毎日、小豆やタロイモを仕込んでくれたのである。
94歳の郭李常美は息子がこう話すのを聞いて、首を振り「息子はよくやってくれています」と言う。互いの思いやりが伝わってくる。
この老婦人は、実は商売に機転が利く。「しばらく前は、隠居して旅行に行きたいと思ったんですが、365日旅行するわけにもいかないでしょう」と言い、それで店に出ていた方がいい、と考えるようになったそうだ。
実は常美氷店は、台湾で最初にアイスキャンディを作った歴史に記載されている「旗山枝仔城」と親戚関係にある。旗山枝仔城の創設者‧鄭城は郭李常美の夫である郭正輝と異父兄弟なのである。郭正輝は一人立ちすると、家族とともに旗山にゴマ油の工場を開いた。最初は貧しかったが、妻の郭李常美が家計の足しにと、1945年に雑貨店を開いてゴマ油や味噌などを扱い、続いて紅茶や冬瓜茶などの冷たい飲み物も売り始めた。
ところが、郭正輝が友人の保証人になって債務を負い、郭家の自宅も差し押さえられてしまった。そこで郭李常美は夫の異父兄弟である郭城の協力を得てアイスキャンディを売り始め、豚を飼って収入を増やした。1966年、息子の大学進学の際には、豚を売って学費に当てた。当時の辛い日々を思い出すと老婦人の目に涙が浮かぶ。
こうして少しずつ借金を返し終えると、貯金も溜まっていった。そして1982年に郭李常美は大胆にも数十万元を投じてアイスキャンディ製造装置を購入したのである。イノベーションに長けた彼女は、16種類ものアイスキャンディの味を作り出した。現在は30種のフレーバーが貼りだされているが、それも郭李常美が開発したものだ。