「支援者」から「育成者」へ
遠山呼喚の活動は、系統だった教育サービスモデルを提供するというものだ。
台湾大学経済学科の林明仁主任や政治大学の蘇昱璇教授らの協力を得て、彼らはこのモデルを四つの重点から成る「教育種植計画」と名付けた。第一は、資金を募って奨学金を提供し、子供たちが安心して進学できるようにすること。第二は、読書を奨励する環境を整えること。第三は、保護者デーや親子講座を開催し、親に学校へ通うことの重要性を理解してもらうこと。第四は、同じく僻地出身で首都で成功している人を招いて講演してもらうことである。
以前のボランティアの経験も役に立った。短期ボランティアには限界があることを知っていたからだ。「好奇心とか、余所の土地で暮らしてみたいという態度で来たら、現地の人の立場から考えることはできません。ですから、ボランティアという形は、私たちの仕事にはふさわしくありません」と蔡宛庭は言い切る。
何かを与えるという態度では、互いの依存関係を強めてしまい、現地にとっては決して良いこととは言えないのである。
これは多くのNGOが抱える課題でもある。「地元の人々の大部分が収入を国際援助から得るようになり、また頻繁に外国人と接触していると、暗に明に必要なものを求めてくるようになります。求めれば得られるという態度は、自分や自国に対する信頼とアイデンティティの不足を反映しています」とディレクターの洪于倫は言う。
「遠山呼喚の最終目標はここを去ること」と取材中、蔡宛庭は幾度も口にした。既存の資源を考慮し、彼らは一時的な援助ではなく、的を絞って深耕することにしたのである。
まず、援助を受けて大学を卒業した現地の若者を選考した。彼らは外国語ができ、リソースを探す力もあるため、地域を変える重要な役割を果たせる可能性がある。
例えば、ゴルカで仲間として働くSang Doma Sherpaは、最初はボランティアで通訳を担当していたが、さまざまなプロジェクトを経て学校側と交渉する窓口となり、少しずつ経験を積んで今では運営に習熟している。
彼は台湾から来たチームの精神を受け継ぎ、ネパールで遠山呼喚を登記して現地のNGOを立ち上げている。方法や組織は台湾と同じだが、マンパワーとリソースは現地のものである。
遠山呼喚はネパールの小学校と協力し、3年のうちに中退率を42%から2%まで引き下げた。