教室外の、これも授業
別の日の午後、我々は何俊賢とともに、台北101ビルの近くにある博愛小学校に来ていた。この夏、彼は非常に忙しかった。夏休みを利用して3校を回り、小規模ながら工事を進めていた。
同校の3階に上がると、一面の緑が現れた。校舎2棟をつなぐ屋上に、彼の設計による空中庭園が作られている。
片側には、学校の近くにある象山を模して芝生を植えた場所があり、もう片側には、やはり近隣の高層ビルを模して、高低の異なる木箱が並べられ、その中には季節ごとに順に育つハーブ類が植えられている。そしてこれらはすべて雨水だけで育つよう設計され、人が水やりする必要はない。
何俊賢は我々を芝生の上に座らせ、持ってきたアイスコーヒーを飲みながら、周囲を眺めて満足げにこう言った。「ここで楽しむティータイムは、近所のホテルより気持ちいいでしょう」
一方、台北郊外の石碇に、山を背負って建つ和平小学校では、彼の考え出した方法で水資源を利用している。山の泉水と学校の排水を調整池に引き入れ、水生植物や曝気作用によって水質を浄化し、生徒の水遊びや作物の灌漑に使う。
環境保全、食農、科学の応用を組み込んだ設計だ。「難しいことを説明しなくても、こうした方法で子供たちに理念を伝えられます」と言う。
休む間もなく各地を行き来するが、子供たちとのふれあいを語る彼は疲れを知らない様子だ。
今でもゴルフをするのかと問うと「時間がないし、興味もわきません」と朗らかに笑った。心の求める幸福をすでに見つけたという笑顔だった。
何俊賢は、大学生から小学生までを引き連れて、竹であぜ道を編む。 (何俊賢提供)
何俊賢が石碇の和平小学校で作った棚田「山澗水」は、山の中の小学校の景観に溶け込んでおり、これを使って水資源と食糧の問題を教える。
台北の高級住宅地にある博愛小学校で、自分がデザインした芝生に座って満足そうな笑顔を見せる何俊賢。