一枚の絵で転学を選択
その一言が劉経^٣の心に重く響いた。小さい頃から真面目で親の言うことを聞く子であったが、自分の中に自由を尊ぶ一面があることに気づき、将来も絵を続けたかったら、今選択しなければと思った。
転学を決めたものの、美術課程の基礎がないので、まず普通科高校に入学し、大学入試の志願表にはデザイン関係の学科を選択した。
「高校では新聞部に入り、紙面のグラフィックデザインに興味が湧き、時間をかけて勉強しました」。高校時代にデザインソフトを使い始め、自分の好きなデザインを求めて模索していった。
大学時代はシュール・レアリスムに夢中になり、環境保護とアメリカンビーフをテーマに卒業制作の動画を作った。作画から編集、吹込みから特殊効果までを手掛けたことで、創作における自身の位置づけを確定していった。
「自分の創作では、とにかく他者と異なっていたいのです」と劉経瑋は言う。人と違うものを作るため、卒業制作の期間中、数カ月も学校に泊まり込んだ。様々な素材や媒体のデザイン実例を研究し、扱いたいテーマを集めてみると、自分が社会的テーマに強い興味を抱いていることに気づいた。これを目標に据えて、さらに技術を磨き、卒業制作を完成してみると、一つのデザイン・プロジェクトを独力で完成させる実力がついてきたのを感じたのである。
兵役を終えてから、母校の大学院に進学すると、デザインの依頼を受けるようになった。若者の怖いもの知らずで、来た依頼は何でも断らず、OEM工場向けのICデザインからカタログ製作、ファッション・ブランド向けの広告写真まで引き受け、撮影も自分で行い、値切られても歯を食いしばって完成させた。
大学の卒業制作では、環境保全とアメリカ牛という社会問題をテーマにシュール・レアリスムの動画を作った。