主観が入るジャッジ
鄭大為の事件がようやくおさまった頃、今度は楊淑君の事件が発生した。
2010年11月の広州アジア大会、49キロ級の初戦に出場した楊淑君が第1ラウンドで9対0とベトナムの選手を大幅にリードしていた時、韓国系フィリピン人の審判に防具不合格を理由に失格とされたのである。
テコンドーのジャッジには主観が入り込む余地があることが以前から指摘されており、判定の公正さと精確さを高めるために、最近は電子防具をつけるようになったが、この時に問題になったのは、その一つの電子ソックスだった。電子ソックスにはセンサーがついており、それが一定の力で相手の防具と接触すると信号を発し、得点が計上されるようになっている。
昨年のアジア大会では初めて新型の電子ソックスが採用され、楊淑君は旧型をつけていたため失格と判定されて勝てるはずの試合に負け、敗者復活戦の出場権も失った。楊淑君が涙を流す場面に、再び韓国に対する民族感情に火がついた。
「間違ったソックスをつけていたのは私たちのミスですが、失格でその後の試合も出場できないというのは重すぎます」とあるコーチは話す。だが問題は、国民感情に火が付いてアジアテコンドー理事会に抗議したため、台湾人は騒ぎ立てるという印象を持たれてしまい、将来の国際大会に影響することだ。
世界のテコンドー界は、かつての二強に中国大陸が加わって三強時代を迎え、多くの事件の疑問も中国や韓国と関わっており、国民は両国が台湾を挟み打ちしていると感じている。
足技が得点の決め手となるテコンドーでは、足に付けたセンサーがジャッジを補助する。写真は今年、新竹の明新科技大学で行なわれた代表選手選抜試合。