若者とシニアの絵本の世界
絵本は、ここのお年寄りたちが物語を語るための重要な媒介である。壁一面を占める書架には色とりどりの絵本が並ぶ。大学では演劇、大学院では教育心理‧指導を学び、絵本作家でもある林宗憲は、専門的な知識をもって絵本を解釈する。だが、教材にふさわしい絵本を選ぶのは非常に難しく、多くの時間を費やす。
「私の専門はポジティブ心理学で、ポジティブな思考を通して解釈しています」と言い、絵本を通して高齢者が社会に貢献できるようにしている。現在の絵本教材には、共感、欲望、認知症、自己治癒力、死、自信などさまざまな内容がある。「例えば『九色のしか』は善と夢を追求する物語です」と林宗憲は絵本を手に取ると目を輝かせる。登場人物それぞれが異なる人格を象徴している。王妃を深く愛する国王は愛のために理性を失った選択をしてしまう。王妃は欲のためにひたすら求め続け、薬草取りは利益のために命の恩人を裏切る。善と美の化身である九色の鹿は傷を負うが、その純真な心を失うことはない。「物語の中心はforgive、love、hopeです」と言う。
林宗憲は「絵本は道具に過ぎず、高齢者こそ主人公」と、訓練を受けた高齢者に自信を持つ。「かつてはそれぞれの職場で活躍していた方々ですから」と言い、一方的に教えるのではなく、さまざまな質問や討論を通して、自分たちで考えてもらう。絵本の物語からそれぞれのインスピレーションを引き出し、人生における経験で解釈できるよう導くのである。
「私は新荘から桃園まで運転していって、虎頭山公園で物語を語っていますよ」と話すのは101おばあちゃんだ。年齢は彼女にとって身分証上の数字でしかない。その明るく自信に満ちた表情を見ると、報いを求めない奉仕こそ真の喜びだということがわかる。
林宗憲は、高齢者には、慣れ親しんだ居心地のいい場を抜け出して、限界を突破してほしいと思い、「頼るところがない状態にして、自分の力で物語を語る機会を創り出してもらうようにしています」と言う。また「力を出してこそ得るものがある」という制度を設け、メンバーは費用を出して絵本を使用し、講習も受ける。ただし、毎月どこかへ出かけて物語を語り、それを報告すれば、林宗憲はその記録に従ってご祝儀を渡す。額は少ないが、それが大きな励みになり、達成感が得られる。価値が価格になるという循環メカニズムで、学費を支払い、またそれを生徒に還元するのである。もともと、この事業で利益を上げようとは考えていない林宗憲は、シード講師を育成し、活動を広めていきたいと考えている。
訓練を受けたお年寄りたちは、対象にふさわしい絵本を選んで物語を語る。