素材開発と産業連携
デジタル機器はデスク上の配置を変えたが、従来のライトやトレイなどにも新たな素材が取り入れられている。
ASUSからスピンオフしたPegatron(和碩)はOEMで知られるが、ここでもデザイン部門を設けてPegacasaブランドを打ち出した。各種新素材のデザインと開発を通して、台湾の川上から川下までの産業を結び付け、台湾の技術的優位性にさらなる発展の機会を見出そうとしている。
Pegacasaのルネッサンスシリーズ生活雑貨にはデザイン分野に取り組むPegatronの理念が表れている。文化とテクノロジーを融合させ、天然素材と工芸美にバランスを見出すのである。
Pegatronのデザインディレクター李政宜はこう話す。デザインチームが最初の製品にデスク上のステーショナリーを選んだのは、ビジネスに忙しい現代人はエクスペリエンス・エコノミー(体験経済)を求めていると考えたからだ。「現代人はマズローの欲求5段階説の最高レベル、自己実現の欲求の段階に達していて、体験型の消費が重要になっています。だからこそ、デザインには質感の他にストーリー性が必要なのです」
そこで彼らは竹を素材に選んだ。
LEDデスクライトには台湾麻竹(マチク)を選び、1台に一つだけ、スイッチの位置に節目が来るようにした。LEDはまるで自然に竹の中に存在するような感じで温かい光を放つ。この作品は2015年にシカゴ・アテナイオン博物館のグッドデザイン賞を受賞した。
もう一つの代表作、Torch懐中電灯では孟宗竹(モウソウチク)と金属という異質な素材を組み合わせた。竹は炭化処理して塗装し、電池を入れる部分のプラス・マイナス端子には金メッキを施して液漏れにも強くし、照明は6階建ての高さまで届く。スイッチは時計工芸にも等しいレベルの回転式である。
李政宜によると、竹の素材探しやデザインから製造工程までにわたって、デザイナーと竹工芸職人が互いに刺激し合い、伝統の竹工芸技術が機械・電気設計と結合して素晴らしいものができたと言う。
懐中電灯に必要な竹材は、握りやすい直径2.5センチと決め、それに合う竹を探すために、デザイナーと竹工芸職人は一緒にジープで山中を探し回り、量産段階でも天候の影響を受けたが、竹工芸職人もこうした経験を通して新たな産業にチャレンジするエネルギーを見出した。
また童子賢董事長の理念に従い、Pegatronでは材質を丹念に研究し、中小企業の産業チェーンと協力して加工技術を探っている。これこそ台湾産業の実力と言えるだろう。昔ながらのクラフトマンシップが新技術発展の契機となる。こうした過程を通して、Pegacasaはより多くの体験型消費を生み出したいと考えている。
こうした考えから、スマホケースのデザインでも、一般の商品との競争よりも企業価値の体現に重きを置き、カーボン鍛造技術を持つ台中のメーカーとも開発面で協力している。「こうした経験が今後のIT製品のデザインに応用できれば、顧客に我々の新技術を見せることができ、企業としての開発エネルギーを発揮できるのです」と李政宜は言う。
世界初の水冷式冷却ユニットを搭載したゲーミングPCは折紙をコンセプトにデザインされた。ASUSは世界のゲーミングPC市場で40%のシェアを誇る。(ASUS提供)