昔の市場は売買される商品の名称で呼ばれていた。米市、布市、柴市、魚市などだ。しだいに市場の規模が大きくなると、識別や管理のために地方自治体が公有市場を設けるようになり、それらは第一公有市場、第二公有市場などと名付けられた。
このほかに、どの城門に近いかで、東門市場、南門市場などと呼ばれることもあれば、地名や道路名から九份市場、瑞芳市場、建国市場などと呼ばれるものもある。台南永康の「兵仔市」のように通称の方が一般的になることもある。こうした市場の多くは卸売がメインで、近隣の兵士が仕入れにやってくることからこの名で呼ばれるようになった。近くのバス停名や道路標識まで通称に変わり、正式名称が使われることは少ない。
北から南まで、台湾各地にさまざまな市場がある。伝統的な朝市や夕方の市、魚市や花市などがあり、昔から多くの人の暮らしを支えてきた。では、どの市場が特色あって面白いのだろう。今月号のカバーストーリーでは、取材班が物産や文化、建築などの面から特色ある市場を選んで訪れた。暮らしに密着した市場を通して、台湾の多様性と豊かさをご覧いただきたい。
今月号は他の記事でも台湾らしさが際立つ。中央研究院が参加する国際協力プロジェクト「イベント‧ホライズン‧テレスコープ」、台湾の優れた製茶工芸、科学教育を楽しいものにする台湾電力の「電幻1号所」、国家宇宙センターによる低軌道人工衛星の開発、注目されるオーディオエコノミー、それに低炭素工作機械産業などである。『光華』の報道を通して視野が広がれば幸いである。また、今月号の市場特集をお読みになったら、次回市場を通りかかった時にはぜひ中に入ってひと回りしてみていただきたい。きっと、それまで知らなかった驚きや喜びに出会えることだろう。
現代詩人の楊牧の作品「圓環」は、かつての台北市建成圓環市場の記憶を忠実に表現している。
「碁盤の目に並んだ店舗/奇怪な文字と赤い吊り照明/山と積まれた瀬戸物の椀/吹き出して雲のようにただよう熱気/曲がりくねった通路/知っているようで知らない香料…」
さまざまな人が集まる市場では、毎日、人間の衣食住と喜怒哀楽が演じられ、それは多くの人の成長の記憶と重なるものだろう。今月号のフォトエッセイは「思想のあるサウンド/台湾の音楽とバンド」をテーマとした読者からの応募作品だ。写真を通して地域の声を聴き、思考を集めて挑戦に満ちた未来と向き合おうではないか。