新世紀には新たな顔を
だが月日の流れは真珠をも色褪せさせる。漁獲高の低下や珊瑚の生産量の減少によって人口が流出、今や古びた建物が歳月の流れを物語り、もはや往年の喧騒は見られない。だが港に並ぶ漁船は、昔と変わらず静かに出立を待っている。
秋の午後、海風が寂しげに港に吹いていた。日の照りつける中、漁師たちが地面に広げられた漁網を慣れた手つきで修繕している。その顔には海風にさらされた年月が刻まれている。
ぽつりぽつりと帰港する漁船から荷が下ろされる。競り師や漁師はタバコをくわえ、荷積みしたトラックの入場をのんびりと待っている。一見穏やかな風景だが、実は変化の兆しをはらんでいた。この南方澳は、まさに新たな一歩を踏み出そうとしているのだ。
「時間との競争ですよ。理事長の任期は4年しかありませんから」今年4月に宜蘭県蘇澳区漁業組合の第19代理事長となった蔡源龍は、南方澳に深い思い入れがあり、漁港の転身を綿密に計画中なのだ。「漁業資源の枯渇は全人類にとっての災難です。地球を守るつもりで環境保全に取り組んでいかなければなりません」と蔡源龍は思いを込めて語る。彼の描く構想は、環境保護を意識したハーバー・パーク「南方澳大園区」の建設だ。それによって休日の交通渋滞を解消し、同時に経済効果をもたらそうというのだ。
「南方澳大園区」内での交通機関は電動車とし、二酸化炭素削減を実現する。また「サバ産業工場」を作り、1年を通じて豊富な漁獲物を加工する。こうして魚価の安定と漁業者の収入増加をかなえるほか、南方澳加工品のブランド力を高め、ひいては国際化を図る。南方澳第三漁港脇にある「祝大漁」物産文化館で、蔡源龍はさまざまな加工品を前に、「我々の商品を食べた人は皆、絶賛してくれます。私には自信があります」と誇らしげに語った。
パークには「鯖魚館」も設立し、南方澳の輝かしい歴史や文化を展示する計画だ。おいしい魚介類を味わってもらうだけでなく、心の糧も得てもらおうというのだ。「産業と文化の結びつきは、南方澳の今後の発展目標です」と、漁港再生の方向を蔡源龍は見据える。
南方澳商圏発展協会理事長であり、文化歴史保護にも取り組む、三剛鉄鋼廠文物館館長の廖大慶はこう語る。「経済発展の前期には、産業を文化に取り入れることで実力を増すことができますが、経済力をつけた後は、文化を産業化する必要があります。そうすれば、南方澳の国際的知名度も高まるでしょう」地元の歴史や文化を大切にし、それらを魅力的に深く伝え得るガイドやシステムを整えてこそ、文化は成長し、この地を訪れようという人も増える。
サバ漁は南方澳の経済基盤である。台湾トップの漁獲高を誇り、サバの故郷と呼ばれている。