町づくりとエコロジー
「里山生態公司」創設者の一人である林志遠は台中高級農業学校の出身。屏東科技大学森林学科に進学してからは、陳美惠准教授に従って地域で町づくりの仕事に取り組むようになり、その関係で墾丁に通うこととなった。学生時代から、林志遠は同級生や後輩とともにバイクを2時間走らせて恒春と学校の間を往復していた。そうして数年を過ごすうちに、社頂エリアやその周辺の住民と家族のように親しくなったのである。
林志遠が自分たちで会社を作ろうと考えるようになったのは、大学院を修了する直前のことだった。「森林学大学院に学ぶ学生の進路としては、林務局や林業試験所などの公務員になるか、そうでなければ研究職しかありません」と林志遠は言う。だが彼は、勤め人になるより、あちこちで地域住民と一緒に何かをするのが好きで、エコツーリズムに大きな可能性を感じていたため、同級生の葉دة良と議論を重ねた末、自分たちで会社を始めることにしたのである。陳美惠准教授も彼の考えに賛同し、環境の持続可能な発展を提唱する日本の「SATOYAMAイニシアティブ」から「里山」の二文字を取り、林志遠らの新しい会社の名称としてプレゼントしたのである。
「里山」とは何を意味するのか、また「環境に配慮したエコツーリズム」とは何なのか。一般企業の商品説明に比べると、林志遠は自社のサービスの説明に時間をかけなければならない。だが、難しいのは顧客への自己紹介ではない。「町づくり」と深く結びついた里山のエコツアーは、参加者を募って地域へと連れていくだけではない。地域住民を説得して参加してもらい、ツアーをデザインしなければならないのである。
毎週、林志遠と会社のメンバーは、手分けして8つの地域へ赴き、各地域の住民と会議を開く。「地域住民の参加意欲が高くない時は、里山のメンバーが自ら参加しなければなりません。また、住民の意見が合わず、不満が出た時は私たちがカウンセラーのようになって、住民の不満のはけ口になります」と言う。何もかも背負わなければならないことが多いが、こうした中から特色あるツアーコースや思いがけないアイディアが出ることもある。「例えば、永靖エリアの『茂伯と一緒に郵便配達』コースも、大光エリアで提供する『漁夫弁当』も、住民とのおしゃべりの中から生まれたものです」と李怡慧は言う。
観光客を率いて永靖大草原を歩き、夜間は港口渓を訪れて河岸の生態を観察する。恒春各地の素晴らしさを、地元のガイドが教えてくれる。