
時代の変化に伴い、台湾では文化的に特別な意義を持つ数々の町が生まれた。長い歴史と文化を誇る鹿港、鉄道の歴史が残る車埕、砂金採りからカトリック教会までさまざまな文化が融合した新城、そして最大の客家市場と物産の集散地として知られる竹東などだ。これら有形無形の文化遺産が台湾全体の発展の歴史をとどめ、台湾文化を紐解くカギを握っている。
彰化県の鹿港は歴史物語に満ちた小さな町である。その古い町並みを観察すると、数々の歴史の痕跡を目にすることとなる。古い町並みにある老舗茶屋、中山路に建つ丁家の邸宅、至る所で目に入る鹿港工芸などだ。天后宮や龍山寺などの寺廟は住民の信仰と文化の象徴である。古い建築物は、華麗な彫刻であれ、色褪せた壁であれ、時間の流れの厚みを感じさせ、多くの観光客を引き寄せる。
車埕は南投県の山間の小さな町だ。鉄道集集線の終着駅で「最後の駅」とも呼ばれる。かつて製糖業や発電所、林業などで栄えたこの町を歩き、産業の転換と再生の物語をご覧いただきたい。ショッピングエリア「林班道」の孫嘉璐ディレクターが「以前は木材を買う人しか訪れなかった」と言う車埕の町が、政府の協力も得て、多くの人が訪れる観光地となったのである。
花蓮県の新城は圧倒的に美しい太平洋に面し、市街地から車で10分もかけずに曼波海堤や月牙湾に行くことができる。ここではかつて砂金が採れ「日本統治時代にはゴールドラッシュのために1万人も住める碁盤の目の町が整備されました。アスファルトなどなく、砂利道だった時代の賑わいを想像してみてください」と佳興氷果店の楊文欽さんは新城の歴史を語る。この他に新城駅、新城天主堂、新城写真館の物語もお読みいただきたい。
最後は、豊かな客家文化で知られる新竹県の竹東だ。竹東の昔の地名をご存じだろうか。台湾の半導体産業の発展と竹東の天然ガス採掘はどう関わっているのか。員崠小学校周辺の人々は竹東のどのような記憶を語ってくれるのだろう。竹東市場ではどんな客家の美食が味わえるのか。この町の歴史から読み解いていきたい。
歴史から文化、景観、人情まで、これら四つの小さな町は見尽くすことができない。もちろんこの他にも台湾には訪れてみたい小さな町がまだまだある。いずれも台湾のさまざまな時代の縮図であり、多様で豊かな暮らしの風景を見せてくれる。今月号ではこのほかに、台湾のスイカ育種技術、街屋文化、膠彩画などに関する記事もお楽しみいただきたい。