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元泰竹芸社の壁一面にかけられたアウトドアカップ。鮮やかな色が目を引く。
南投県竹山鎮頂横街にレトロな手描きの看板を掲げた「元泰竹芸社」がある。この場所で、斜陽産業が華麗なる変身を遂げた。おしゃれなイメージに惹かれて若者たちが訪れ、またサステナブルで脱プラスチックにつながる環境に優しい商品があるというので、ヨーロッパ人観光客も買い物にやってくる。
おしゃれな出で立ちの林家宏さんは、イメージしていた「工芸一家」の三代目とはずいぶん違う。職業軍人として戦闘機のメンテナンスに従事し、デザインを学び、最先端のアパレルショップを開いたこともある。さまざまな経歴を持つ彼は、十年前に家族から意向を問われ、喜んで家業を継ぐことにした。
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収納ケース付きの耳かき。
脱プラスチックの波に乗る
竹産業が衰退しつつある竹山の町で、「斜陽産業」という考えに縛られない彼は、家業として受け継がれてきた技術と人脈とリソースを積極的に統合していった。
竹製の歯ブラシは元泰竹芸社がリニューアルした最初の製品である。実は当初、林家宏さんはESGやSDGs、サステナビリティといった概念はほとんど理解しておらず、ホテル業者から問い合わせを受けて開発してみただけだと言う。
だが、これを発売すると、主婦連盟や荒野保護協会、グリーンピースといった民間団体から高く評価され、「100%生分解可能」な歯ブラシを作ってほしいとリクエストされた。そこで彼は孟宗竹に柄に馬の毛のブラシをつけた歯ブラシを開発した。同じ年にはクラウドファンディングで竹のストローの開発資金を募り、こうしてブランドとしての知名度を高めていったのである。
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異業種とのコラボを楽しむ林家宏さんは、花蓮の職人と協力し、竹製フレームの自転車を作った。
異分野との協力
竹製品は素朴で禅を感じさせるものでなければならないのか。生まれ変わった元泰竹芸社の林家宏さんは、従来のイメージにとらわれない。
「異分野・異素材」が、林家宏さんが新製品を開発する時のキーワードである。
一般には古めかしいイメージのある竹のカップだが、彼は明るい色でこれを彩ってアウトドア用マグカップにした。--皮のような質感のあるワインレッド、エルメス・オレンジ、アーミーグリーンなどのバリエーションがある。これにテント用のロープやパラシュートコードを利用して取っ手をつけ、レーザー彫刻でタイワンツキノワグマやミカドキジ、タイワンヤマネコといった台湾のシンボルを描いてある。
また、アサヒビールの缶に敬意を表して作ったカップは、繊細なレーザー彫刻とサンドブラスト彫刻で質感を出しており、ビール缶によく似ていて竹でここまでできるのかと驚かされる。
彼の祖母が開発した竹の耳かきも改良し、竹の収納ケースをつけて新商品にした。
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自動化生産される竹製の歯ブラシ。ブラシ部分の素材やサイズにもバリエーションがあり、ニーズによって選ぶことができる。
品質を重視し、口コミで広げる
現在販売している品目は多くはないが、林家宏さんは高い品質を要求している。
竹製の歯ブラシは規格化して自動化生産するようになった。工業生産でありながら竹の温もりも感じさせる製品だ。
ブランドマーケティングに多くの費用はかけていないと彼は言う。最良のマーケティングは実際にその質の高さを感じてもらうことだからだ。
以前は車庫の中で専ら編み棒を生産していた家の工場が、今では10人の従業員を抱えるトレンディーな竹工芸企業になった。日本のアウトドアファッションの雑誌『GO OUT』でも紹介され、日本やシンガポール、イギリス、スイス、カナダなどのアウトドア用品店やセレクトショップでもその商品を扱うようになった。
竹産業が斜陽だなどと誰が言ったのだろう。竹製品が現代的なイメージで日常生活に再び登場している。元泰竹芸社は、伝統工芸の新たな可能性を証明したのである。
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アウトドア派の林家宏さんは、自分の趣味を活かした商品開発を進めている。